科目ナンバー
01E2101
科目名
植物病理学
担当教員名・資格
井村 喜之【准教授】
単位数
2
配当年次
2年生
必修・選択
必修
開講学期
前期
学科・クラス指定等
学科指定無し
履修条件
(1) 高校生物を学習していなくても理解できるように基礎的な内容を含めて講義を展開するが,「高校生物基礎・生物」を事前に理解しておくことが望ましい。
(2) 講義後に要点や重要なキーワードを振り返って確認し,必ず自習すること。
授業の概要
植物病理学は,世界全体で病気により農作物の約15%が損失している現状において,植物の病気の原因を探り,病気が発生するメカニズムを理解した上で,病気を防ぐための技術を研究することによって,「農作物の安定的供給」や「食の安全・安心」に寄与する重要な学問分野である。さらに,植物病理学の知識とその応用は,SDGs(持続可能な開発目標)17目標の7つのゴールの達成に貢献することができる。そこで,植物の病害発生の仕組み,多様な病原体の性状,病害の発生生態,植物と病原体間の相互作用における病原体の病原性機構と植物の抵抗性機構,病害防除方法等の基礎を講義する。

学びのキーワード
植物病原体,発病要因,植物-病原体相互作用,抵抗性遺伝子,病原性因子,遺伝子対遺伝子説,寄生性分化,レース分化,宿主特異的毒素,エフェクター,診断・同定,生物的防除,化学的防除,環境保全型農業,植物防疫
授業の目的
植物病理学が農業生産に果たしている役割を理解し,病気の発生要因や病原体,病徴等の植物病に関する基本的な知識,植物と病原体の相互作用に関する生理・生化学現象,細胞・分子レベルでの変化を植物側または病原体側の視点から理解し,複雑な生物間の生命現象についての知識を修得する。さらに代表的な事例による病害の診断・同定・防除およびこれらを総合した総合防除等の環境保全型防除技術について具体的な事例を把握し,植物病理学を知識だけでなく,実学として体系的かつ総合的に理解することの重要性を認識することを目的としている。
授業方法
対面授業を基本とするが,社会的状況に応じて,映像授業を行う。
各回の授業前に講義資料を配布し,視聴覚教材の使用および板書により講義を実施する。講義内容の理解を深めるため,授業終了後に確認テストを実施する。

学修を通じて育成する力(DPとCPとの対応関係)
DP・CP1

知識・教養・倫理観

DP・CP2

世界情勢の理解

DP・CP3

論理的・批判的思考力

DP・CP4

問題発見・解決力

DP・CP5

挑戦力

DP・CP6

コミュニケーション

DP・CP7

リーダーシップ・協働力

DP・CP8

省察力

到達目標
  • 病気の発生要因と植物病を引き起こす病原体に関する基礎知識を修得する。
  • 植物と病原体の相互作用における生理・生化学現象,細胞・分子レベルでの変化に関する基礎知識を修得する。
  • 植物病の診断・予防・防除に関する基礎知識を修得する。
授業計画
回数 授業内容 授業時間外学習
(準備学習・復習)の内容
時間外学習時間数の目安(分)
1

【植物の病気と防除】
植物病の概念を解説し,植物病理学が果たしている社会的役割と意義,農業生産における植物病害防除の重要性と社会的意義を考察する。

準備学習:シラバスを確認した上で,植物病とは何かを下調べする。
復習:植物病害防除の意義について自分の考えを取りまとめる。

120分
2

【植物病の発生要因と病原体】
植物病が発生する三要因を解説し,各要因を排除するための対策について考察する。

準備学習:発病三要因とは何かを下調べする。
復習:伝染病を引き起こす病原体をまとめ,発病三要因に関する具体的な事例をリストアップする。

120分
3

【病原体の種類と病害の特徴Ⅰ】
植物病原体の一つである菌類の種類と特徴を概説し,その生物学的特徴,分類,生活環,病徴等について理解する。

準備学習:菌類とはどのような生物なのかを下調べする。
復習:主要な植物病原菌類に関する具体的な病害事例を調査する。

120分
4

【病原体の種類と病害の特徴Ⅱ】
植物病原体の一つである細菌およびファイトプラズマの種類と特徴を概説し,その生物学的特徴,分類,病徴等について理解する。

準備学習:細菌とファイトプラズマとはどのような生物なのかを下調べする。
復習:植物病原細菌とファイトプラズマに関する具体的な病害事例を調査する。

120分
5

【病原体の種類と病害の特徴Ⅲ】
植物病原体の一つであるウイルスおよびウイロイドの種類と特徴を概説し,その生物学的特徴,分類,病徴等について理解する。

準備学習:ウイルスについて下調べする。
復習:植物ウイルスとウイロイドに関する具体的な病害事例を調査する。

120分
6

【病原体の種類と病害の特徴Ⅳ】
植物寄生性センチュウ類およびその他の生物について,その生物学的特徴,分類,病徴等について理解する。

準備学習:センチュウについて下調べする。また,これまで学習した病原体について総括しておく。
復習:植物寄生性センチュウ等に関する具体的な被害事例を調査する。

120分
7

【病原体の病原性】
病原体が植物に病害を引き起こす力(病原性)とは何かについて,病原性の構成因子や実際の生物現象から認識する。

準備学習:微生物が植物に感染・寄生するとはどのような生物現象なのかを下調べする。
復習:感染・寄生に関する具体的な研究事例を調査する。

360分
8

【植物の病害抵抗性】
植物が病原体の感染を受けた時の組織・細胞レベルでの生理応答について解説し,抵抗性とはどのような生物現象なのかを把握する。

準備学習:植物の異種生物認識とはどのような生物現象なのかを下調べする。
復習:寄生・感染時の宿主応答に関する具体的な研究事例を調査する。

360分
9

【植物と病原体の相互作用Ⅰ】
病原微生物の寄生性分化および遺伝子対遺伝子説に基づく病原微生物のレース分化についての知識を身に付ける。

準備学習:病原微生物の寄生性分化およびレース分について下調べする。
復習:寄生性分化の進化的意義を考察する。

360分
10

【植物と病原体の相互作用Ⅱ】
植物と病原体との共進化と植物の品種特異的抵抗性についての知識を修得する。

準備学習:市販の植物種子に記載されている病害抵抗性の種類を下調べする。
復習:植物病原菌のレースと品種特異的抵抗性に関する方眼検定方法を完修する。

360分
11

【病原体の病原性因子】
病原体が分泌する宿主特異的毒素や酵素,エフェクターの植物への作用についての知識を修得する。

準備学習:植物と病原体の相互作用における病原性因子について下調べをする。
復習:病原性因子の種類とそれらの作用をまとめ,植物に与える影響を考察する。

360分
12

【植物の抵抗性遺伝子】
植物の抵抗性(R)遺伝子産物の主な構造と受容体,シグナル伝達としての機能を理解する。

準備学習:植物と病原体の相互作用における抵抗性遺伝子について下調べをする。
復習:抵抗性遺伝子から翻訳されるタンパク質の構造的特徴を整理する。

360分
13

【植物病害の診断・同定法】
コッホの原則を理解した上で,菌類,細菌,ウイルスの各種病原体を同定および診断するための方法とその原理,手順等を把握する。

準備学習:疫学および診断・同定とは何かについて下調べする。
復習:病原体の種類によって,なぜ適切な診断方法が異なるのかを考察する。

240分
14

【植物病害の防除法】
植物疫学について病原微生物の伝染環と環境という点から解説し,化学的防除と生物的防除について考察する。

準備学習:化学的および生物的防除法について下調べする。
復習:化学的および生物的防除技術をどのように使うべきか自らの考え方を整理する。

240分
15

【これまでの学習内容の確認】
植物病理学を知識だけでなく,実学として体系的かつ総合的に理解する。

準備学習:一連の講義でのノートや配布資料を通じて,全体の内容を把握する。
復習:植物病理学とはどのような目的で,誰のために,何をする学問領域なのかを整理する。

240分
到達目標と成績評価方法の対応
到達目標(再掲) 成績評価方法
病気の発生要因と植物病を引き起こす病原体に関する基礎知識を修得する。
授業内試験および確認テスト
植物と病原体の相互作用における生理・生化学現象,細胞・分子レベルでの変化に関する基礎知識を修得する。
授業内試験および確認テスト
植物病の診断・予防・防除に関する基礎知識を修得する。
授業内試験および確認テスト
成績評価基準・割合
授業全般の理解度を問う筆記試験(70%),毎回の授業内容を正しく理解していることを問う確認テスト(30%)により総合的に評価する。
到達目標の(1)病気の発生要因と植物病を引き起こす病原体に関する基礎知識,(2)植物と病原体の相互作用における生理・生化学現象,細胞・分子レベルでの変化に関する基礎知識,(3)植物病の診断・予防・防除に関する基礎知識,を修得していることを評価の基準とする。
フィードバックの方法
・授業内試験は,試験後に設問の意義と模範解答を解説する。
・確認テストでは,次回以降の授業内で問題や課題に関する解説を行う。
・講義での受講生からの「気づき」を共有するとともに,「質問」を授業内に回答する。
教科書
植物病理学(土佐幸雄・眞山滋志編)文永堂
植物医科学(難波成任監修)養賢堂
Plant Pathology(5th Edition), George Agrios, Elsevier社
参考書
植物たちの戦争(日本植物病理学会編集)講談社
オフィスアワー
  • 開始期間

    2023/04/12
  • 終了期間

    2023/07/29
  • 開始時間

    • 14:30
  • 終了時間

    • 17:00
  • 曜日

  • 場所

    講義室または12号館1階 植物医科学研究室,Google Classroom

備考

・基本的に講義終了後に質疑応答を行う。また,Google Classroomを通しても質疑応答を行う。
・講義での「気づき」や「質問」を受け,授業内に回答する。
・提出された確認テストの返却および回答を通じて対応する。

科目の特徴
  • アクティブ・ラーニングを用いた授業
  • 解決策が一つではない問題にチャレンジし,解決策を探し出す。
  • ICTを用いた授業
  • Google Classroomを通じて講義資料の予習や質疑応答を実施する。また,Google Formにて確認テストを実施する。
  • 実務経験のある教員による実践的授業
  • 農林水産省や国立の研究機関で各種微生物,ウイルスを対象に実務経験を積んだ教員による実践的な要素を含めた授業を展開する。
備考