科目ナンバー
01B3101
科目名
アグリバイオテクノロジー実験法
担当教員名・資格
井村 喜之【准教授】
単位数
2
配当年次
3年生
必修・選択
選択
開講学期
前期
学科・クラス指定等
学科指定無し
履修条件
(1) 卒業研究にて,分子生物学実験を要するテーマに取り組んでいる,または取り組もうと考えている学生の履修が望ましい。
(2) 講義後に要点や重要なキーワードを振り返って確認し,必ず自習すること。
授業の概要
農学分野のバイオテクノロジー(アグリバイオテクノロジー)は,SDGs(持続可能な開発目標)の17目標の中にある「飢餓をゼロに」および「陸の豊かさも守ろう」等の達成に直結する食糧問題や環境問題を解決するとともに,“食”を通じて私たちの生活をより豊かにする有効な手段として期待されている。本講義では,植物と微生物バイオテクノロジーを対象にPCRによる遺伝子の増幅,クローニングからトランスジェニック植物の作製に至る一連の基本的な遺伝子操作技術を修得する。さらに,蛍光タンパク質を利用した解析やウイルスを用いた遺伝子ノックダウン法などの最新の実験手法を含めた幅広い,実践的な技術を取り扱う。
学びのキーワード
DNA,RNA,タンパク質,クローニング,逆転写反応,PCR増幅,リアルタイムPCR,シーケンシング,プラスミド,蛍光タンパク質,酵素,抗原抗体反応,ウェスタン解析,生細胞および無細胞系タンパク質合成,in vitro転写,遺伝子導入法,トランスジェニック植物,次世代シーケンス,RNA-seq,酵母,タンパク質間相互作用,ウイルス誘導性RNAサイレンシング
授業の目的
バイオテクノロジーとは,『生物が持っている機能を直接に,あるいは人工的に模倣して利用する物質生産技術』と定義されており,その手法は,遺伝子操作技術,細胞培養技術,微生物・酵素利用技術の三つの柱に大別される。この中で,生命科学と農学を融合させた新たな知識をマスターするために必須となる,遺伝子クローニングから植物および微生物の遺伝子操作技術を中心に学修する。遺伝子やタンパク質を取り扱う実験では,肉眼では確認できない分子を取り扱うため,手順の一つひとつを理解し,的確な操作が要求される。したがって,実験の原理や手法,テクニックと併せて各種薬品の性質や作用,操作の意味を理解し,プロトコール本では記載されていない実験のコツや要領等の幅広い実践的な知識を修得する。
授業方法
対面授業を基本とするが,社会的状況に応じて,映像授業を行う。
各回の授業前に講義資料を配布し,視聴覚教材の使用および板書により講義を実施する。講義内容の理解を深めるため,授業終了後に確認テストを実施する。
学修を通じて育成する力(DPとCPとの対応関係)
DP・CP1

知識・教養・倫理観

DP・CP2

世界情勢の理解

DP・CP3

論理的・批判的思考力

DP・CP4

問題発見・解決力

DP・CP5

挑戦力

DP・CP6

コミュニケーション

DP・CP7

リーダーシップ・協働力

DP・CP8

省察力

到達目標
  • 農学とバイオテクノロジーを関連づけ,農学分野で必要されるバイテク技術を理解する。
  • 核酸(DNA,RNA)およびタンパク質の抽出・検出や様々な解析の方法と原理を理解する。
  • バイオテクノロジーの操作手順や技術に関する知識と技能を身に付け,実践的に活用できる能力を修得する。
授業計画
回数 授業内容 授業時間外学習
(準備学習・復習)の内容
時間外学習時間数の目安(分)
1

【アグリバイオテクノロジーの概要】
農学分野で応用されているバイオテクノロジー技術全般を紹介し,SDGsに関わる食料問題や環境問題の解決とバイテク技術を関連づける。

準備学習:遺伝子組換え作物に関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。

180分
2

【プラスミドおよび大腸菌の取扱いと利用法】
遺伝子クローニングに必要不可欠なプラスミドおよび大腸菌の特徴と種類について理解する。さらに,これらを用いた実験方法と操作等を修得する。

準備学習:遺伝子クローニングに関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
3

【植物からのDNA,RNA抽出法】
植物の遺伝子を解析する上での基本操作であるDNAおよびRNAの機能的,構造的な違いを理解した上で,抽出方法とその原理,純度測定,取扱いの留意点等を修得する。

準備学習:核酸の機能やセントラルドグマに関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
4

【逆転写反応およびPCR増幅法】
逆転写反応によるcDNAの合成とそれに続くPCR法の原理・実験操作について理解する。PCR法では,プライマーの長さやGC含量を踏まえた設計を考察する。

準備学習:遺伝子増幅法の発見とその利用に関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
5

【シーケンシングおよびホモロジー解析法】
塩基配列を決定するシーケンシング法の原理・実験操作について把握する。さらに,得られた配列を用いたホモロジー解析を検索サービスを利用して実践的に理解する。

準備学習:塩基配列決定法とそこから何が判るのかに関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
6

【トランスジェニック植物の作製法】
植物細胞へ目的の遺伝子を導入する各種方法を理解する。特にアグロバクテリウム法に用いるプラスミドの特徴と植物種に応じた感染方法を把握する。

準備学習:遺伝子組換え生物とそれらの特徴に関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
7

【PCR用プライマーのデザインおよび前半の学習内容まとめ】
植物由来の各種遺伝子配列を基に,PCR増幅からクローニングに至る一連の操作を実践的に理解するため,プライマーのデザインと制限酵素配列の付与,クローニングベクターの選択等の基礎的知識を身に付ける。

準備学習:これまでの本講義から遺伝子増幅法からクローニングまでの操作を再度理解しておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
8

【サザン・ノーザンブロットハイブリダイゼーション法】
ハイブリダイゼーションの原理を理解した上で,遺伝子のコピー数を把握するサザン解析,遺伝子の発現量を調べるノーザン解析の実験方法とそれらの手順について理解する。

準備学習:これまでの本講義から核酸の特性などを再度理解しておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
9

【ウェスタンブロット法】
抗体の種類と取扱いを理解した上で,タンパク質解析に不可欠なSDS-PAGE法,染色法から一次抗体および二次抗体の選び方,ウェスタンブロッティングまでの一連の操作を把握する。

準備学習:抗体と抗原抗体反応に関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
10

【リアルタイムPCR法】
近年,遺伝子発現を定量化する方法として最も一般的なリアルタイムPCRの相対定量および絶対定量を対比し,理解する。また,定量方法・手順等の一連の操作手順を把握する。

準備学習:これまでの本講義から遺伝子増幅法を再度理解しておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
11

【生細胞・無細胞系タンパク質合成法】
目的とするタンパク質の機能解析や抗体作製に必須となるタンパク質合成法について,細胞を用いる系と用いない系の両者の原理と方法について,対比して理解する。

準備学習:メッセンジャーRNAからタンパク質が翻訳されるメカニズムに関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
12

【酵母を利用した各種解析法】
植物遺伝子やタンパク質の機能を明らかにする上で,真核生物である酵母を利用するメリットは大きい。そこで,酵母を用いた転写因子の特定や分子間相互作用の特徴と原理を把握する。

準備学習:真核生物と原核生物の遺伝子発現様式の違いに関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
13

【蛍光タンパク質を用いた実験法】
オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質はタンパク質自体が蛍光を発するため,目的のタンパク質の細胞内局在性や定量性を調べる実験に活用できる。蛍光タンパク質を用いたタンパク質間の相互作用を含めて,これらの実験方法と原理を理解する。

準備学習:ホタルとクラゲが発する“光”の違いに関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
14

【ウイルスを用いた逆遺伝学的解析法】
ウイルスを利用して植物体内での遺伝子発現をノックダウンするウイルス誘導性RNAサイレンシングの原理・方法とその応用例についての知見を得る。

準備学習:ウイルスに対する生物の防御システムに関する事前知識を得ておく。
復習:本講義で示した“キーワード”の詳細を調べ,内容をまとめる。さらに,確認テストにより講義内容の理解を深める。

240分
15

【これまでの学習内容の確認】
実践的に活用する実験方法とその手順・原理を熟知する。

準備学習:一連の講義でのノートや配布資料を通じて,全体の内容を把握する。
復習:講義内容全体を体系づけて深く理解し,実践的な能力を身に付ける。

300分
到達目標と成績評価方法の対応
到達目標(再掲) 成績評価方法
農学とバイオテクノロジーを関連づけ,農学分野で必要されるバイテク技術を理解する。
授業内試験および確認テスト
核酸(DNA,RNA)およびタンパク質の抽出・検出や様々な解析の方法と原理を理解する。
授業内試験および確認テスト
バイオテクノロジーの操作手順や技術に関する知識と技能を身に付け,実践的に活用できる能力を修得する。
授業内試験および確認テスト
成績評価基準・割合
授業全般の理解度を問う筆記試験(70%),毎回の授業内容を正しく理解していることを問う確認テスト(30%)により総合的に評価する。
到達目標の(1)農学のバイテク技術,(2)核酸およびタンパク質の抽出・検出方法およびその原理,(3)核酸およびタンパク質のさまざまな解析方法と原理,(4)バイテクの操作手順や各種薬品の性質・作用,を理解し,実践的に活用できる能力を身に付けていることを評価の基準とする。
フィードバックの方法
・授業内試験は,試験後に設問の意義と模範解答を解説する。
・確認テストでは,次回以降の授業内で問題や課題に関する解説を行う。
・講義での受講生からの「気づき」を共有するとともに,「質問」を授業内に回答する。

教科書
バイオ実験イラストレイテッド 1~7巻(中山広樹ほか著)秀潤社
遺伝子工学実験ノート 上下巻 (田村隆明/編)羊土社
RNA実験ノート 上下巻(稲田利文,塩見春彦/編)羊土社
タンパク質実験ノート 上下巻(岡田雅人,宮崎 香/編)羊土社
参考書
オフィスアワー
  • 開始期間

    2023/04/12
  • 終了期間

    2023/07/29
  • 開始時間

    • 12:10
  • 終了時間

    • 15:00
  • 曜日

  • 場所

    講義室または12号館1階 植物医科学研究室,Google Classroom

備考

・基本的に講義終了後に質疑応答を行う。また,Google Classroomを通しても質疑応答を行う。
・講義での「気づき」や「質問」を受け,授業内に回答する。
・提出された確認テストの返却および回答を通じて対応する。

科目の特徴
  • アクティブ・ラーニングを用いた授業
  • 解決策が一つではない問題にチャレンジし,試行錯誤を繰り返しながら解決策を探し出す。
  • 情報リテラシー教育を含む授業
  • 遺伝子解析ツールサイトの利用法,ジーンバンクの特徴とその活用法を取り扱う。
  • ICTを用いた授業
  • Google Classroomを通じて講義資料の予習や質疑応答を実施する。また,Google Formにて確認テストを実施する。
  • 実務経験のある教員による実践的授業
  • 農林水産省や国立の研究機関での実務経験を積み,上級バイオ技術者認定の教員による実践に基づいた授業を展開する。
備考