科目ナンバー
42F1103
科目名
科学史(02)
担当教員名・資格
松本 俊吉【非常勤講師】
単位数
2
配当年次
1年生
必修・選択
選択
開講学期
前期
学科・クラス指定等
学科指定無し
履修条件
履修条件は特にないが、同一教員の後期科目「科学技術と社会」とあわせて受講すると、このテーマに関する理解がより深まると期待される。
授業の概要
約40億年前に最初の生命が誕生して以来、生命は外的環境との相互作用のもとで進化してきた。ダーウィンから現代に至る進化生物学は、こうした〈生命〉と〈環境〉との相互作用の解明を目的としている。この授業の第1部では、ダーウィン進化論の基本的な考え方と、その後の現代に至るまでの若干の展開について学ぶ。他方で、進化論は単なる生物学の理論であるにとどまらず、宗教的・政治的にも多大なインパクトを与えてきた社会思想という側面をあわせ持っている。この授業の第2部では、こうした観点から、進化論が社会との接点において引き起こしてきた様々な論争を集中的に取り扱う。最後に、進化論は決してダーウィン一人によって完成されたものではない。この授業の第3部では、進化思想の歴史に焦点を当て、そもそも「種の不変性」の思想が常識であったギリシア以降の西欧社会において、いつどのような事情で進化思想という「種の可変性」の考え方が登場したのか、そしてダーウィンが進化論を体系化する以前の18世紀から19世紀にかけて、それがどのような進化思想家たちによってどのように改良されバトンタッチされていったのか、ということを概観する。
学びのキーワード
進化論、自然選択、生存闘争、地球史カレンダー、生命の起源、人類の誕生、恐竜の絶滅、ダーウィン、ラマルク、用不用説、獲得形質の遺伝、利己的遺伝子、自然選択の単位、ドーキンス、キリスト教創造論、スペンサー、社会ダーウィニズム、優生学、社会生物学、ギリシア自然学、タレス、アナクシメネス、デモクリトス、アリストテレス、リンネ、存在の大いなる連鎖、ボネ、目的論、機械論
授業の目的
① 「環境との相互作用による生命の進化」というダーウィンの自然選択説の基本的な考え方を理解し、「進化論的なものの見方」を、自分でものを考えるときの一つのツールとして使いこなせるようになる
② 現代も継続中の進化論をめぐる宗教的・政治的論争をフォローすることによって、科学的言説が時と場合によってはイデオロギー的機能を果たしうるという科学社会学的洞察を得る
③ 最終レポート作成のための調査研究を通じて、文献やインターネットなどのリソースからの情報収集能力、自分の考えを論理的に表現する能力、一定の学術的技法に則り不特定多数の読者を対象とした情報発信型の文章を締め切りまでの限られた期間で作成する能力、などを開拓する
授業方法
・毎回の対面授業は、PowerPoint(PPT)を使って行う。PPTのスライドをPDF化したものと、その他授業で必要となる参考資料を、Google Classroom上に授業資料として掲載する。
・毎回の授業後、Google Forms上で出題する小テストを翌週までに受験することによって、各回の授業内容の理解度を確認する。
・学期末提出の2500字以上の最終レポートによって、自分で問いを立て、必要な文献を調査し、レポートを執筆するトレーニングをする
学修を通じて育成する力(DPとCPとの対応関係)
DP・CP1

知識・教養・倫理観

DP・CP2

世界情勢の理解

DP・CP3

論理的・批判的思考力

DP・CP4

問題発見・解決力

DP・CP5

挑戦力

DP・CP6

コミュニケーション

DP・CP7

リーダーシップ・協働力

DP・CP8

省察力

到達目標
  • 理系的(生物学的)な観点から、ダーウィン進化論の基本的な考え方と、進化論のその後の展開について、自分の言葉で他者にも説明できるようになる(自分で本当に理解していなければ、他者に伝わるように説明はできない)
  • 文系的(歴史的・社会思想史的)な観点から、進化論が社会との接点において引き起こしてきた様々な論争についての理解を深め、それが例えば「福祉政策か、自由競争主義か」「男性/女性間の性別役割分業は果たして認められるべきか」といった、現代社会の根幹にかかわる政治論争とも密接に関連しているという認識を身につける
  • 信頼できるリソースからの情報収集能力、自らの考えを論理的に表現する能力、締切までの限られた時間でそれを他者にとっても説得的な形で文章化する能力といった、今後社会に巣立っていった後も必須となる、現代知識社会を生き抜いていくためのサバイバル能力を身につけるための一步を踏み出す
授業計画
回数 授業内容 授業時間外学習
(準備学習・復習)の内容
時間外学習時間数の目安(分)
1

ガイダンス/科学史で何を学ぶか:最初にこの授業の進め方を解説した後に、科学史から何を学ぶことができるかについてお話しする

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で課題を行う

240分
2

【第1部】
地球史カレンダー:生物学的な視点から進化論を扱う第1部の皮切りとして、地球46億年の歴史とその中の生命の歴史40億年を概観する

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける

240分
3

地球史カレンダー(続):前回の授業に続き、今から約6500万年前に恐竜が絶滅に追い込まれた理由と、それに引き続いて起こったは虫類とほ乳類の「政権交代」について

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける

240分
4

ダーウィン進化論の基本:では地球上の生命は、なぜ40億年かけてここまで進化してこられたのか? その答えとなるダーウィンの進化論について、「自然選択」「生存闘争」「先天的変異」などの基本概念を解説する 

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける

240分
5

ラマルクの進化論と獲得形質の遺伝の問題:ダーウィンの進化論の特異性(特にその先天的な変異へのこだわり)への理解を深めるために、今回はダーウィンとは異なるタイプの進化論を提唱したラマルクを取りあげる。特に「獲得形質の遺伝」という、その後生物学にも大きな影響を与えた考え方を紹介する

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける

240分
6

利己的遺伝子と自然選択の単位の問題:ダーウィンの進化論は19世紀に提起されたものだが、進化論自体も絶えず進化している。ここでは近年の一つの話題として、ドーキンスによって導入された「遺伝子の目から見た進化」の考え方を紹介する

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける

240分
7

最終レポート作成法の解説
【第2部】
キリスト教創造論:文系的な視点から進化論を扱う第2部の皮切りとして、進化論とキリスト教がなぜ対立し合わねばならなかったのかということを、理論的・思想的な観点から説明する

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける/最終レポートの構想を練る

240分
8

キリスト教創造論(続)/創造論との対決:前回の授業を承けて、進化論とキリスト教創造論との理論的な対立点を概観した後、進化論者と創造論者が歴史的にどのような論争を繰り広げてきたのかということをフォローする

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける/最終レポートの構想を練る

240分
9

創造論との対決(続):前回の授業を承けて、20世紀以降の米国において、公立高校の生物の時間に進化論を教えることを禁ずるか否かをめぐって裁判闘争にまで発展した論争、そしてインテリジェント・デザイン論という装いをあらたにした創造論について取りあげる

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける/最終レポートの構想を練る

240分
10

スペンサーの社会ダーウィニズム:ダーウィンの「生物」進化論を、広く人間社会・歴史の説明原理として適用したハーバート・スペンサーの社会進化思想と、その功罪について。進化論は果たして「強者の論理」か?

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける/最終レポートの構想を練る

240分
11

社会ダーウィニズムと優生学:スペンサーの思想はその後「戦争の世紀」である20世紀に猖獗を極めた優生学――これはヒトラーのユダヤ人虐殺にも理論的根拠を与えたとも言われる――に間接的に影響を与えることになる。今回は、こうした歴史の暗部と進化論の関係について考える

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける/最終レポートの構想を練る

240分
12

社会生物学論争:エドワード・ウィルソンの『社会生物学』の出版を皮切りに、1970~80年代に米国を中心に燃え盛った社会生物学論争について。特に、オス(男性)とメス(女性)との間の性的役割分業はどこまで生物学的に正当化されるかという問題をめぐる進化論者とフェミニストとの論争について

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける/最終レポートの作成

240分
13

【第3部】
ギリシア思想の生命観:「ダーウィン以前の進化論」の歴史を辿る第3部の皮切りとして、まず、進化論とは対極的な「種の不変性」の思想が支配していた紀元前のギリシア自然学の生命観について解説する

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける/最終レポートの作成

240分
14

存在の連鎖とその時間化:18世紀の化石の発見をきっかけに進化思想が登場してきた経緯を、リンネとボネという相前後する二人のキリスト教的博物学者がとった異なる態度に即して考える

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける/最終レポートの作成

240分
15

ラマルクの目的論とダーウィンの機械論【オンデマンド授業】:19世紀に近代的な進化論の仕上げに大きく貢献した二人の進化論者を再度取りあげる。その上で「科学的」進化論としての現在における彼らの理論の評価の決定的な違いをもたらしている要因は何なのかを考える

【予習】Google ClassroomにUPした授業資料に事前に目を通し、知らないキーワードをネット等で調べておく
【復習】授業全体を振り返った上で、Google Forms上で小テストを受ける

240分
到達目標と成績評価方法の対応
到達目標(再掲) 成績評価方法
理系的(生物学的)な観点から、ダーウィン進化論の基本的な考え方と、進化論のその後の展開について、自分の言葉で他者にも説明できるようになる(自分で本当に理解していなければ、他者に伝わるように説明はできない)
毎回の授業後Google Forms上で行う小レポートないし小テスト
文系的(歴史的・社会思想史的)な観点から、進化論が社会との接点において引き起こしてきた様々な論争についての理解を深め、それが例えば「福祉政策か、自由競争主義か」「男性/女性間の性別役割分業は果たして認められるべきか」といった、現代社会の根幹にかかわる政治論争とも密接に関連しているという認識を身につける
毎回の授業後Google Forms上で行う小レポートないし小テスト
信頼できるリソースからの情報収集能力、自らの考えを論理的に表現する能力、締切までの限られた時間でそれを他者にとっても説得的な形で文章化する能力といった、今後社会に巣立っていった後も必須となる、現代知識社会を生き抜いていくためのサバイバル能力を身につけるための一步を踏み出す
最終回(第15回)授業日に提出締切の最終レポート(テーマは自由/分量は2500字以上)
成績評価基準・割合
毎回の小レポートないし小テストの合計点(75%)、最終レポートの出来映え(25%)
フィードバックの方法
毎回の小テストの解説を次回授業の冒頭で行う
教科書
教科書は使用しない
参考書
松本俊吉『進化という謎』春秋社、2014年
ダーウィン『種の起源(上・下)』(渡辺政隆訳)光文社古典新訳文庫、原著1859年
河田雅圭『はじめての進化論』講談社、1990年 (http://meme.biology.tohoku.ac.jp/INTROEVOL/ で公開)
R.ドーキンス『利己的な遺伝子』紀伊國屋書店、原著1976年
E.マイアー『ダーウィン進化論の現在』岩波書店、原著1991年
柴谷・長野・養老編『講座進化①―進化論とは』『講座進化②―進化思想と社会』東京大学出版会、1991年
八杉龍一編訳『ダーウィニズム論集』岩波文庫、1994年
横山輝雄『生物学の歴史―進化論の形成と展開』、放送大学、1997年
P.ボウラー『進化思想の歴史』(上・下)朝日新聞社、原著1984年
鵜浦裕『進化論を拒む人々:現代カリフォルニアの創造論運動』勁草書房、1998年
内井惣七『進化論と倫理』世界思想社、1996年
R.ホフスタター『アメリカの社会進化思想』研究社、原著1944年
佐倉統『進化論の挑戦』角川選書、1997年
E. O. ウィルソン『人間の本性について』思索社、1990年
オフィスアワー
  • 開始期間

    2023/04/14
  • 終了期間

    2023/07/28
  • 開始時間

    • 12:10
  • 終了時間

    • 13:00
  • 曜日

  • 場所

    授業後に教室または講師室で対応。もしくはEメールで随時対応

備考

メールアドレスは、shun[at]tokai.ac.jp
科目の特徴
  • ICTを用いた授業
  • Google ClassroomやGoogle Formsを使って、資料や動画の配信および毎回の課題(レポートあるいは小テスト)の提出を管理する
備考